2022.02.28
チューリップを使って 2つのブーケ
こんにちは!jardin nostalgiqueの青江です。
3月に入って、ちょっと暖かい日が増えましたが、
今週の東京の週間天気予報では
雪だるまマークと最高気温20度という
なんとも極端なご案内を見つけて、
まさにでこぼこ、三寒四温を目で感じ、
春がその先にあることを期待している今日この頃です。
お店の春のお花も、今までは寒い店内で固く締まっていたけれど、
ほんの数度暖かくなっただけで、少しふわり、ぷっくりと、
表情がふくよかになっている気がします。
数年前から、春のお花の代表選手、
ラナンキュラスやチューリップ、スイトピーなどは、
本当に品種が増えて、毎年新しい色・咲き方に出会っていて、
花屋さんって、本当に飽きないなーって思います。
そんな中でも今年の春は、チューリップに心惹かれて、
レッスンでは、2つのチューリップありきなテーマを考えてご提案しました。
今回のコラムでは、その2つのレッスンをご紹介します。
チューリップ!と言われて思い出すのは、
おそらく大勢の方がお花の部分だけではなく、
茎と葉っぱが付いた様子なのではないでしょうか!?
そのように、チューリップの個性としては、
花の色や形はもちろん、
茎のしなやかな動き、マットな葉っぱの様子など
花ではない部分もとても特徴的かつ魅力的です。
それ故にか、なんとなく、上からよりも横から見たくなるお花だと思います。
また、日々の伸張、開花による変化など、
時間によるフォルムの変化がとっても大きいところも大きな特徴。
束ねた時バランスがばっちりでも、翌日にはぴょこりと伸びる元気っ子な様子を
ブーケとして飾りながら愛でられたら。
そんな思いで考えた2つのブーケです。
まず最初は「チューリップmeetsボヘミアン!」
フレッシュな印象のチューリップを乾いた印象のボヘミアンな雰囲気の中におくことで、
コントラストから生まれる化学反応があるのでは!?と思って企画しました。
チューリップはもとは中央アジアやトルコが起源とされ、徐々に西方へ運ばれブームとともに定着した歴史があります。そんな西への旅の途中で、きっとボヘミアンにも出会っていたはず!なんて思いを馳せてみたり。
ボヘミア地方の乾いて荒れた大地の表現に、枯れ枝のごとく使ったのは
かわいい蕾のついたクロモジの枝。
実はこのクロモジの枝は、そんな雰囲気の演出でもありつつ、チューリップが伸びてきたときの支えとして構造的にも支えてくれる役割を託しています。
他にも、乾いた雰囲気が特徴なネイティブフラワーや、奇妙なお花を集めてみると、
決してボヘミア地方のお花というわけではないけれど、異国的な情緒を醸し出して、
思わず心の中で「ボヘミアーン」とつぶやいてしまうような雰囲気になります。
また、お花の色彩においても、ボヘミアンな雰囲気を作り出す際には、
柄っぽさに気を付けて選んでいます。
民俗衣装に見られるような、トライブ柄やフリンジなど、お花の個性に置き換えられる特徴を取り入れます。
束ねる際は上から見てお花の顔をきれいにならべることよりも、
横から見た花の姿全体を風景のように愛でながら束ねます。
その点で、自分の中ではシャンペトルブーケと同じ印象なのですが、
シャンペトルブーケに爽やかな風が吹き抜け、草花が揺れる印象としたら、
ボヘミアンブーケには、乾いた風が吹き、花が揺れずとも砂が舞うようなイメージ。
何じゃそりゃの世界ですが、テクニックが似ていても、
花が変われば見える景色も変わる。
自己満足的にでも、違う風が吹いていることが大切だと思っています。
荒廃したラフな雰囲気として、
複雑な重なりを作ることもボヘミアンの中では好みです。
ガチャガチャとした重なりをたくさん作りたくて、
閉じた世界の中に極力たくさんの要素を盛り込みます。
そうして出来上がったブーケの中で、
チューリップはすっとボヘミアンに馴染んでくれたように思います。
それは予期して期待していた相反する要素の化学反応なのかもしれないし、
チューリップの起源から自ずとその中にあるオリエンタルな魅力を
同様に個性の強いボヘミアンが教えてくれたようにも思います。
ボヘミア地方にどっぷり浸かったあとは、一気に行き先を南へ!
第二弾のテーマは「カーニバル」!
レッスンに参加してくださる生徒さんと、チューリップレッスンのテーマの話をしている時に、チューリップが日々動くことから、
「ダンス」というキーワードをいただき、
そこからいろいろな踊りを思い出して、タンゴにロンドに舞踊に阿波踊りに。。。
なんていろいろ思いめぐらせる中、やはり春らしい明るいブーケにしたいなーと思ったことにより、
うっかり「ディスコ!」なんて突っ走りそうになったのをスタッフにブレーキをかけてもらい、たどり着いたのが「カーニバル」でした。
ちょうど開催期間が世界でカーニバルが開催される期間だったのも、自分の背中を押してくれました。
もともとのカーニバルはキリスト教の行事で、イースターの40日前からはじまる四旬節という断食期間(肉を食べない)の前に、みんなで騒ごうー!!というイベントだったようです。我慢をする前に思い切り発散するという発想は歴史の中でも人類みな共通なんだなーと、ちょっとほっとしたりして。
今更ながら、日本語では、カーニバルを謝肉祭と書くのも、肉に謝るのでも、感謝するのでもなく、肉を絶つということで、謝という字の断る、とか、謝絶するという意味に由来するそうです。これで謝肉祭という字面から発せられるスーパーの特売日的なイメージから脱却できたのでした。
今回はそんなカーニバルをテーマにするにあたり、
フランス語のカルナバルとしたので、
気持ちの中でリオを目指してぐっと南に行きかけたものが
南仏目指してまた北へ戻ってきましたが、イメージは同じです。
(ちゃんと2つのカーニバルを体験したら、同じなんて言えないのでしょうけど)
とにかくパッと明るい暖かな色彩で、はつらつと開放的に仕上げたく、
市場の仕入れの際は今だけはjardinのこともnostalgiqueのことも忘れて!と、
目に飛び込むカラフルを集めていきました。
メインとするチューリップも、咲き方も彩りもとりどりに、にぎやかに。
束ねる際は、閉じた世界だったボヘミアンとは対照的に、
外へ外へと開放的に、伸びやかに束ねました。
やはり、花と花とがぶつからないように空間を作ってあげるのは
シャンペトルブーケやボヘミアンブーケと同じことなのですが、
風を吹かせるためではなく、その花がちゃんと踊れるように、
個性を発揮できるようにするための空間を作ってあげます。
レッスン中は、
「そのステージは密だねー!満員でこれじゃ踊れないよー!」とか、
「わー、その花は目立ちたがり屋でオンステージだねー!」とか、
カーニバル故の表現が自然に出てしまったものです。
普段はなかなか選ばない花材で、10年以上開催しているレッスンでも初めて使ったのがグロリオサ。
テーマを決めると、普段使わないお花を選べることは、
いつも思いますが本当に楽しいです。
みんなとてもうれしそうにカーニバルなブーケを仕上げて帰ってくれましたが、
自分はこっそり心の中で「本当のカーニバルはこれからだよー!」と、
みなさんがお家で活けてからのお花達の動きに期待していたのでした。
2つのチューリップのブーケ。
それぞれ全く違うテイストでしたが、
それ故に、チューリップの違った魅力を見つけることができたように思います。
ボヘミアンのブーケは開催してから3週間程経ちましたが、
参加した方から、「チューリップが散った後もブーケが美しくて」というお話をいただきました。
確かに、散った後のチューリップもとっても個性的。
枯れた様子が似合うボヘミアンテイストならではな美しさだなーと、
自分の想像も至らない発見をしてくださったことにもとてもうれしいレッスンとなりました。
チューリップを比較的安心して長く楽しめるのは本格的に暖かくなる前までかなーと思っています。
皆様もぜひ、駆け足で、この春のチューリップを目いっぱいお楽しみくださいね!