2023.11.14
野獣達と枯れ色のブーケ
こんにちは!jardin nostalgiqueの青江です。
いよいよ12月も間近となり、
朝晩の寒さには時折冬の訪れを感じることもありますね。
暑い夏のさなかは「冬の寒さの方がまし!」と豪語していたけど、
やはり寒さもつらいものですねー。
市場に向かう日の朝はお急ぎで支度するのですが、
冬は何層にも着込んだりホッカイロはったりするのに手間がかかり
その点で着替えの早かった夏は良かったなーと、
生活の中でちょこちょこ、季節の中の小さな違いを感じています。
お店のレッスンでは、もう冬支度として
クリスマスリースのレッスンを開催しているのですが、
今回のコラムでは、少し季節を巻き戻して、
その前まで開催していた晩秋を意識したブーケレッスンの様子をご紹介します。
テーマは
「晩秋のブーケ・フォービズム ~枯れ色を纏ったフォーブ達~」
草は枯れ始め枝葉は紅葉し、
青かった風景がくすんだ暖色をまとった枯れ色に変化する季節。
その風景の中から花を集めて束ねたら、
きっと素敵なブーケが出来上がります。
それをそのまま晩秋のブーケとしてご提案したら良いのですが、
最近は地域や季節の異なる花を組み合わせられる、ブーケならではの面白みを表現したい気持ちが強く、
異なる要素を折衷することで生まれる化学反応のような調和を意識したテーマを考えてしまいます。
多様性の中の調和に感動したメルボルンの旅の影響が今も続いているのでしょうか。
そこで、晩秋の自然の中にあるような枯れた素材に、
その中には決して存在しないような、
色も個性も主張も強い異国の花達を交えて束ねてみようと考えました。
そのイメージに説得力を持たせるテーマの中で
重要な要素として選んだのが、
絵画において20世紀初頭に出現したフォービズム。
マチスやデュフィなどに代表されるような、
鮮やかで強い色彩が、まるで野獣(フォーブ)のようであるとして名付けられた様式です。
フォービズムの作家のように、強い色彩表現を試みつつ、
晩秋の季節感を感じさせるブーケをご提案したい!と思いました。
色選びでは、フォービズムの画家として代表的なマチスの作品の中で、
今年の夏の展示会で見ることができた「赤の大きな室内」
から受けた感動を色彩に投影して、鮮やかな赤やオレンジを集めてみました。
フォービズムの名の由来である「野獣」的な要素も取り入れるべく、
花の形や強烈な個性から「野獣味」を感じられるものをチョイスしてみました。
こうして、自然の枯れ色を纏った野獣的な花がどのように見えるのか。。。
自分もわくわくしながらサンプルのブーケを束ねてみたのでした。
束ねる際に意識したのは、とにかく色の表現を重視すること。
フォービズムの絵から受けた色の力を、ブーケに込めてみたかったです。
そのために、お花の凹凸はあまりつけず、あえて色を並べるようにして
野獣たる花達の形の個性はほどほど程度に見せるようにしてみました。
個性が集まってできた色面に、紅葉、枯れた穂や草など、
様々な枯れ色を纏わせます。
野獣達の強さを仲良く馴染ませるように。
色彩においては、枝物、葉物の色味も暖色であるこの時期故に、
ブーケ全体が暖色にまとまり、
強い個性の花達なのにとても調和したものとなりました。
かとおもいきや、近づいて見ると、強い個性の花が顔をのぞかせて、
枯れた自然の草や葉がもつナチュラルな表情とコントラストを醸し出していて、
遠くで眺めても近くで観察しても面白いブーケになったように思います。
レッスンの最中は、
もっと枯れ色を纏わせてー!!などと皆様を煽ってしまうことが多く、
もはや纏っているのか纏わりついているのかわからないくらいの存在感で枯れ色がふんだんに表現されることも。それもとっても素敵でした。
今回のお花選びは、秋というどこか素朴で情緒のある季節に
あえてジャルダンノスタルジックらしさのないお花を多用した、特徴的なレッスンだったように思います。
とっても素敵に束ねてくれた参加者の方から、
「今回は好きな花がなかったから、考えすぎず迷いなく束ねられました!!」
と、笑顔いっぱいに報告を受けて
そんな率直なご意見もこのレッスンの感想としてはとっても嬉しいなーと思うのでした。
お家の中で、秋の枯れ色の中の野獣達と目を合わせて、
「ふふっ、意外とかわいいな!」なんて思ってもらえていたらいいなー!
自分にとってもとても印象に残るレッスンとなりました。
ご参加いただきました皆様、どうもありがとうございました!